会 場 オンライン開催 大会参加費 : 無料 日 程 11月6日(土)第1日 ◆シンポジウム「進化・宗教・国家」(13:00〜16:40)(一般公開) 司会 松田宏一郎(立教大学) 発表者 クリントン・ゴダール(東北大学) 田中友香理(筑波大学) 李セボン(延世大学) コメンテーター(ディスカッサント) 大谷栄一(佛教大学) 奈良勝司(広島大学) ◆総 会(17:00〜17:30) 11月7日(日)第2日 ◆研究発表・パネルセッション(終日) ◆「思想史の対話」研究会(14:00〜17:00)(一般公開) ※シンポジウム及び「思想史の対話」研究会は一般公開を予定しております。9月初旬までに参加登録のフォームを学会ホームページ上に掲示する予定ですので,参加予定の方は必ず事前登録してください。それ以外のプログラムは会員のみの参加となります。各セッションのURL,ID・パスワード等については,10月初旬に学会メーリングリストを通じてお知らせします。 ※時間は目安です。確定的な時間,研究発表・パネルセッションの詳細は,後日開設される予定の大会ウェブサイトで告知します。 |
慶應義塾大学三田キャンパスに会員の皆様をお招きして大会を実施したく準備してまいりましたが,新型コロナウイルス感染症の影響により,残念ながら2021年度もオンライン開催となります。
特に本年度は,開催校に誰も集まらない,完全なリアルタイム・オンラインでの実施となります。「開催校」という概念自体が空虚となるこの大会形式に,会場担当者として一抹の寂しさを感じつつも,画期的な試みに携われることを大変光栄に思っています。
今回のシンポジウムは,「進化・宗教・国家」を共通論題に掲げました。その背景には,「コロナ」とテーマを安易に結びつけることなく,あえて「通常営業」を心がけ,現在多くの研究者が学問的に注目している主題を選び,それにふさわしい担当者を招いて議論を深める,本来の学会シンポジウムの姿を実現しようという河野有理委員長を中心とした大会委員会の強い意志があります。
特に今回着目したのは,近代日本における進化論受容を巡る研究動向です。これまで否定的に論じられることの多かった進化論ですが,近年,若手研究者を中心に,その重層的な構造について多角的な視座から解明がなされています。またそれに伴い,同時代の仏教やキリスト教,儒学の捉え直しも進んでいます。最近単著を公刊された3名の報告者と,近代仏教ならびに政治史の分野で幅広く活躍されている2名の討論者をお招きし,19-20世紀日本における科学・宗教・国体論,相互の衝突と親和性についてご検討いただきます。現代の思想課題を考える上でも意義深い,学際的で刺激的な議論が展開されるものと期待しています。
いささかこじつけに思われるかもしれませんが,これまで(どちらかという)福澤諭吉の影に隠れてきた思想家や思想運動に光を当てる本年度のシンポジウムを,仮想空間ながら,慶應義塾で実施できることは,開催校としましても大変に嬉しく感慨深いことです。
オンライン開催ということで,予期せぬ通信障害など,不安もあります。事前にリスクを予測し,その分散を図るなど,大会実行委員として最大限できることを行い,実りある学会の成功に向けて尽力する所存です。ご指導ご鞭撻の程,何卒よろしくお願い致します。
今年度の大会も,昨年度に引き続き,オンラインでの開催となります。なお,昨年度に関しては,ご覧いただいた方はご記憶の通り,シンポジウムと「思想史の対話」に関してはオンサイトで行いそれを中継するという形をとりましたが,今年度に関しては上記も含めてすべてオンラインとなります。
本稿執筆時において,会場校・慶應義塾大学の位置する東京都は,四回目の緊急事態宣言下にあります。高齢者を中心にワクチン接種はおおむね軌道に乗りつつあるものの,集団免疫の獲得にはほど遠く,いわゆる「変異株」の影響も見通せません。もちろん,ワクチン接種が順調に進めば,大会開催予定の11月には客観的状況も世の中の認識も相当に好転していることも考えられます。「今さら,オンラインなんて間が抜けている」。一人の市民としてはそうなっていることを願っていますが,それを既定路線に進むわけにはいかないというのが率直なところです。
これは無論,消極的な選択です。ちょっとした立ち話や挨拶,そして会食に懇親。これらは学会にとって決して不要なものではありません。雑談の場での当意即妙な会話のやり取りやその人の佇まいにおもかげ,そしてそれらを包み込む会場の「ざわめき」こそが学会の記憶を作るといっても過言ではないでしょう。そうした「ざわめき」抜きに,(とりわけ学会の若い世代にとって)学問的共和国への共属感情を高めていくことは容易なことではないかもしれません。
他方で,場所を問わず遠隔参加が可能となるオンラインの利点もいまや明らかです。すでにコロナ禍以前から,土日をまるまる費やして学会にコミットするという「当たり前」を維持することの困難が意識されるようになってきました。学会に参加し,さらに懇親会に参加し,その後のN次会に参加することは,金銭的費用はもちろん大学の行政「雑務」あるいは育児や介護といったケア労働を外部化することが可能な「特権クラブ」への所属を意味するにすぎないのではないか。学会の記憶を作ると称する「ざわめき」の背後には,非正規雇用者をはじめとする構造的弱者へのハラスメントが隠されてはいないか。オンライン開催はこうした問題への一つの技術的解決を提供するでしょう(私自身も昨年度,子どもを公園で遊ばせながら学会の報告を拝聴した際,一種の解放感を味わったことを告白いたします)。
学会にとって,何が本質的部分で,何がそうでないのか。アフター・コロナには改めてこの問いが強く意識されるはずです。そうした点をめぐる会員相互の公共的議論を今後深めていくためにも,今年度はフルオンラインによる学会開催という実験をぜひ成功させたいと考えております。ご協力のほど,よろしくお願いいたします。
長く日本思想史研究の分野を牽引された源了圓先生が,2020年9月10日,虚血性心不全により逝去された。ご著書『義理と人情』『徳川合理思想の系譜』『徳川思想小史』(いずれも中央公論社)『実学思想の系譜』(講談社)などはこれまで多くの読者に迎えられたが,今後も変わらずに読み継がれることだろう。
◆日本思想史研究へ
先生は,大正9年(1920),熊本県宇土市の真宗のお寺に生まれ,第五高等学校から京都大学哲学科に進まれた。田辺元をはじめ,高坂正顕・西谷啓治・高山岩男らが思索を磨き合ったこの時期の京大哲学科の充実ぶりを,後年の先生は,懐かしそうに語られていた。
先生は,兵役の義務を挟んで,昭和23年(1948),ニーチェやドストエフスキーを中心にしてニヒリズムの問題に取り組んだ論文を提出して卒業され,大学院に籍を置きながら出版社に勤め,哲学辞典の編集に従事された。その一方で,日本の近代化をめぐる研究プロジェクトに参加され,その中で次第に日本思想史研究への関心を深められた。この時期に発表された「横井小楠の実学」(『横井小楠研究』藤原書店,所収)は,先生の35歳の時の論文で,それから50年に及ぶ小楠との「格闘」(同書,あとがき)の始まりであった。
◆研究の広がり
編集者と研究者の二重生活が続いた後,40歳を越えて大学の常勤職に就かれた先生は,多方面にご研究の幅を広げられた。江戸時代を中心にしながら,世阿弥や蓮如,篤信の念仏者である妙好人などにも共感を寄せられ,次々とご著書や論文を発表された。
実用的な学問という以上の,人間的な真実を明らめる学問としての「実学」思想の追究。「型」が文化や伝統にとって持つ意味や,社会を生きる人々の人格形成に果たすべき役割への考察。小楠が儒教の伝統から掬い上げた「公共」思想の水脈を開示していく仕事。そして「義理」「人情」をキーワードとして日本人の感情生活を探り,理知を柱とする西欧近代の人間観や,実践知よりも理論知を尊重する西欧の知的伝統が見落としているものに光を当てる研究――こういった課題に,先生は挑んでおられた。
私は,東北大学時代に先生のご指導を受けたが,何かのついでに先生が学科の研究室に立ち寄られると,居合わせた学生や院生とお茶を飲みながら,ご自身の時々の関心を楽しそうに語られるのが常であった。これこれの問題も面白い,こういう本も書きたい,ああいう本も書かねばといったお話をなさって,最後に「我ながら欲張りな話だねェ」と笑っておられたお姿を思い出す。
◆根底をなすもの
では,先生が温められた多様な問題関心の根底をなすものは何だったのだろうか。安易にそれを喋々することは慎むべきだろうが,敢えて言葉にすれば,ご自身の宗教哲学的な体系を築きたいという思いではなかっただろうか。個人・集団・国家,それぞれが免れ難いものとして孕んでいる自己中心性に向き合い,それを克服し,時には内から浄化させる営みとして,宗教や思想,芸術などの意義を捉え,先生は,そのあるべき形や可能性を日本思想史という具体的な場に降りて探っていらした,私にはそう思われる。
最晩年,お見舞にあがると,いつもベッドの横の小卓には,数限りなくページを繰ったためにボロボロになった文庫本の芭蕉が置かれていた。先生はある時,小さなお声で,「芭蕉という人は難しいなァ」とだけおっしゃり,そのまま遠くを見つめていらした。しばらく沈黙の時が流れたが,先生は,ご自身の根底に潜んでいる核心的な問題を静かに反芻されていらしたに違いない。
※藤原書店『機』No.345(2020年12月15日)に掲載したものを一部改稿した。
当学会の会計年度は,10月1日〜翌年9月30日です。したがって,現在は,2020年度(2020年10月1日〜2021年9月30日)中ということになります。
2020年度分の会費が未納の方は,(それ以前の年度の会費も未納の場合はその分もあわせて),すみやかに納入してください。会費納入用の郵便振替口座は下記の通りです。
ゆうちょ銀行※ 2020年度請求分より年会費に一部変更があります。
常勤職にある会員 7,000円(2,000円値上げ)
常勤職にない会員 5,000円(据え置き)
海外在住会員 5,000円(据え置き)
団体会員 3,500円(500円値上げ)
となります。
なお,2018・2019年度分の会費が未納の方には,2020年度末(2021年9月30日)発行予定の『日本思想史学』第53号はお送りいたしません。また,今年度分を含め3年分会費を滞納された方は,会則第4条に基づき,総務委員会の議を経て,3年目の年度末(9月30日)をもって退会扱いとなりますので,ご注意ください。
@連絡先の変更,学会へのお問い合わせ等は,事務局宛に電子メールでご連絡ください。電話・FAXは受け付けておりません。
A本年5月より,事務局から会員の皆様にお知らせがある場合にメールを一斉送信できるよう,会員メーリングリストを試験的に運用しております。「迷惑メール」に紛れこんでいないか,ご確認お願いします。未登録の方は,事務局アドレス()までご一報ください。リストへの登録・追加や削除は事務局のほうで行います。メールアドレスの変更が生じた際は,すみやかにお知らせください。
B現在,事務局ではペーパーレス化を進めております。今後『ニューズレター』は,夏季号だけでなく冬季号も,学会ウェブサイト上での公開のみを原則とする見込みです。なお,会員メーリングリストでも配信する予定です。
C入会手続は初年度の会費の納入をもって完了します。入会承認のお知らせの後,すみやかに初年度分の会費を納入してくださいますようお願いします。