2005年10月29、30日の両日にわたり、東京大学駒場Tキャンパスにおいて、今年度の日本思想史学会大会が開かれました。この大会の様子については大会実行委員長の苅部直氏から、また来年度の大会予定については大会委員長の佐藤弘夫氏から、それぞれ別にお知らせがあります。総会の場で承認された2004年度決算案・2005年度予算案については別表をご覧下さい。以下では評議員会で決定され、総会で報告・承認された人事案件と会則改正の件、および評議員会で検討中の案件についてご報告します。
まず人事案件ですが、学会の事務局長が立命館大学文学部の桂島宣弘氏から早稲田大学文学部の土田健次郎氏にバトンタッチされました。これにともない、総務委員会で事務局を代表する総務委員も桂島氏から土田氏に交代しました。また学会事務局も桂島研究室から土田研究室へと移動し、それをうけて会則上の付記部分が改正されました。
従来当学会では、4月に新旧事務局の交代があり、3年任期で運営されていました。しかし事務引継ぎの都合上、事務局の交代も10月の大会時に行った方がよいという判断がなされ、桂島氏には計3年半の長きにわたり事務局長の劇職を務めていただきました。この期間は学会の全国化という点で重要な時期にあたり、ルーティンワーク面での態勢強化とともに、いくつかの新しい試みも導入されました。このため桂島氏には、学会運営に必要な日常業務の処理のほか、ニューズレターの発刊や学会誌刊行に関わる科研費助成金への応募など、新企画を実施する上でも多大の負担をおかけしました。当学会のために氏が尽された大きな努力に対し、心からお礼申し上げます。また金津日出美氏をはじめ幹事の方々にも厚くお礼申し上げます。
土田新事務局長には、これから3年間にわたり、多岐におよぶ繁雑な学会事務の処理を担当して頂くことになります。宜しくお願い致します。
つぎに選挙管理委員として、学習院大学の中田喜万氏、明治大学の大久保健晴氏を評議員会において選出しました。現学会役員の任期は来年10月の大会前日で切れますので、来年7月頃には、新評議員の選挙が実施されます。選挙管理委員のお二人には、その選挙が公正に実施されるように、きちんとした管理をお願いします。
他に評議員会では、総会でもふれましたように「日本思想史学会奨励賞」(仮)のような名称の賞の新設を検討中です。当学会には、比較的研究歴の浅い多くの会員がいらっしゃいますが、その方々が発表した業績の中から優れた作品を選び、この賞を授与することにより、日本思想史学の一層の進展をはかることが目的です。詳しい選考要領は今後評議員会でつめた上で、来年度から実施できればと考えています。
最後に学会の概況ですが、会員数は団体会員が38機関、個人会員が577名に上っています。とくに個人会員数はこの数年伸びており、会の発展を示すものとして喜んでいます。しかし他面で会費の滞納者数も増えています。当学会では、会員数に0.9をかけて学会としての収入計算を行い、予算案をくんでいます。会費の滞納者が増えますと、当然ながら収入が減り、学会として行う事業や新規企画の実施に支障が生じます。学会活動の一層の発展のためにも、会員の皆さんのご理解と会費納入のご協力をお願いする次第です。
なお当学会の会計年度は、その年の10月に開かれる大会をもって新会計年度に入ります。今年の場合でいえば、2005年10月から2006年9月の一年間が2005年度になります。したがって毎年9月頃、会員諸氏に配布される学会誌は、その年(今年度の場合でいえば2006年)の号ではなく、前年(2005年度)の号ということになります。会費納入との関係でこの点は混乱が生じやすいようです。よくご理解を頂きたいと思います。(2005.11.14)
今年度の大会を東京大学の駒場Tキャンパスで開き、大会事務局を引き受けることが決まったとき、正直なところ、現実の話のように受けとめてはいませんでした。何しろ、当方は駒場ではなく本郷キャンパスの部局に属していますし、自分が教える法学政治学研究科で日本思想史を専攻する大学院学生は、実働数一人しかおりません。ふつうなら、とても学会の開催など、考えられない状況です。
しかし、平石会長のご尽力を通じ、社会科学研究所の佐藤美奈子さん、駒場の比較文学比較文化研究室に属する徳盛誠さん、飯嶋裕治さんが、大会実行委員会に加わって下さったおかげで、開催の体制が整いました。また、前年度開催校の京都大学の辻本雅史先生からの豊富なご助言がなかったら、準備すらおぼつかなかったでしょう。この場を借りて、お礼申しあげます。
当日には、他大学から学習院大学の中田喜万さん、明治大学大学院の飛矢崎雅也さんが、助っ人として加勢して下さり、駒場の比較文学比較文化専攻、相関社会科学専攻の大学院生、また法学部の大学院生・学部学生が、受付や会場準備に走り回ってくれました。身内のことを最初に述べるのは礼を失するのですが、今回は特殊例ということで書きとめます。
開催日は、例年どおり10月末の土・日、29日・30日の両日でしたが、だいたい一日は雨に見まわれるのが通例だそうです。しかし今年は幸い、雨が降ったのは一日目のシンポジウムの間くらいで、大きな支障はありませんでした。ただこれも、事務局の都合だけのことで、来場された方々にはご不便を強いたかも知れません。最終日、あとかたづけの後、会場に置き忘れられた傘が三本。充実した内容に気をとられ、つい手元を忘れた、という印だといいのですが。
参加者の数は、スタッフを除いて、会員218名、非会員50名。懇親会には79名(うち非会員3名)の方々が出席してくださいました。予想をこえる盛況だったおかげで、配布すべき発表要旨集が、二日目には足りなくなるというハプニングも生じました。そのほかにも、大会事務局の不手際で、ご迷惑をおかけした向きがあったかと思い、反省するしだいです。
研究発表の数は26(うち古代・中世5、近世9、近代12)と、昨年よりは減ったものの、増加の傾向は続いているようです。今年はそれに加え、パネルセッションが三部会ありましたので、たとえば近世を主題とする研究発表とパネルセッションとの時間が重なってしまいました。ここまで規模が大きくなってくると、土曜午後にシンポジウム、日曜の午前・午後に研究発表とパネルセッション、という従来の形も、考え直さなくてはいけないのかもしれません。
また、研究発表を行なった大学院生・研究員のうち、懇親会に出席された方は、おそらく半数以下にとどまっています。若い研究者のせっかくの「顔見世」の機会ですから、懇親会を研究発表のあとに設定したり、大学院生の懇親会費を安くするといった工夫も、今後、考えてみていいのではないでしょうか。
ともあれ、大会がぶじ、盛況に終わったのは、何よりも参加者の皆さまのおかげです。深く頭をたれ、来年度開催校の岩手大学に声援を送りながら、記録の筆を擱きます。
改めて言うまでもないが、日本の大学には、「日本思想史」を冠する講座・学科・専攻などは、(ごくわずかの例外を除き)存在しない。つまり本学会は大学に制度的基盤をもたない学問の学会である。この点が本学会の最大の「弱み」である。会員数が500を越えられないのもそのためか。私は長らくそう思ってきた。しかし今回、シンポジウムの報告を聞きながら、いや、この点こそ本学会の最大の「強み」に違いないと、遅まきながら気づくに至った。今年のシンポは壇上に上がった方だけでも、文学、思想、政治学、倫理学、宗教学と多彩であるのに気づいたからである。こんな学会は他にはないだろう。
思えば日本史学と教育学を学問的出自とする私が、倫理学、哲学、政治学、経済学、中国思想、文学、宗教学等の他領域の研究者と出会えたのは、本学会においてである。これら他領域の方から得られた研究上の刺激と学恩は、私にはかけがえがない。もとより本学会は、異なった視点や多様な学的発想からの、日本思想に対する議論が、毎年、この場において交錯し知的インパクトを与え合っている。これこそ本学会の強みでなくて何であろう。そしてシンポこそ、そのハイライト。そう気づいて、改めて報告に聞き入った。
「転生する神話―『日本思想史』は描きうるか」。古代テキストが「神話」として立ち現れ、その解釈が繰り返されつつ「日本」「日本人」等の日本言説が語られてきた、その諸相の議論が企画趣旨。「日本思想史」とは何か、との問いも仕掛けられている。神野志氏は、テキストが変奏・転生していく過程を「テキストの運動」と捉えその「現場」のリアリティにこだわる。刺激的な問題提起と思われた。それは、テキスト解釈を個別の思想の内側や歴史状況に回収する前田氏のような方法への批判が込められている。この点、近代知識人の神話へのスタンスの多様さを手際よく整理された清水氏も含めて、神野志氏との方法論上の議論の交錯と深化は見られなかった。コメンテーターの鋭い指摘で盛り上がったが、このすれ違い自体、本学会の「現場」であると確認できたと思う。
なお、本学会に、留学生や外国人研究者が増えてきたことは大変に喜ばしい。国内研究者内部の問題意識に閉じられた日本研究の鎖国状態は、脱却が急がれる。
最後に、本大会運営は、昨年それに関わった者の目には、ほとんど完璧であったと見えた。東大の関係者の方々には、心からお礼を申し上げたい。
思えば、突然事務局引き受けの打診があったのは、今から七年ほど前のことであったと記憶します。幸いなことに、そのときは同志社大学笠井昌昭研究室が引き受けてくださることとなり、ホッとしたのも束の間、結局は2002年から三年半余り、事務局の仕事を引き受けることとなりました。当初は、年大会一回、機関誌年刊ということで、何とかなると楽観していましたが、正直それは甘い見通しでした。そもそも、学会というものが、生きた組織として存在することとは、他ならぬ毎日呼吸し続けているのと同じくらいに、色々な仕事があるのだということが次第に理解されてきたのです。学術会議関係や学術振興会関係の書類の提出、そして日々電話や手紙等で来る外部からの問い合わせに対する応答、あるいは学会員からの問い合わせや苦情も月に二三回程度はあったでしょうか。そして、名簿の改訂、評議員選挙、新たに立ち上げたホームページの維持・管理等も、やってみると大変なことであることがよく理解されました。
こうしたことを述べましたのは、決して愚痴を言うためではありません。日本思想史学会創設から1999年まで事務局を担ってきた東北大学日本思想史学研究室の方々、そして同志社大学の方々の苦労が初めて理解できるようになったこと、そして、われわれの科研費や学術振興会特別研究員の選出等も、決して独力で獲得されるものではなく、学会の存在と下支えがあってこそだということも痛いほど分かりました。要するに、日本思想史学会の存在は、少なくとも日本思想史学を学問領域としている者にとって、いかに重要な存在であるのかがよく理解されるようになったことが、事務局をやった最大の賜物であったと思います。
顧みると、事務局として果たして十分な仕事が出来たのかどうか、あるいは応対に際して学会員の方々に対しても多くの失礼なことがあったのではないか等を思うと、恐縮する他はありません。その点は学会員の皆様方のご海容を乞うばかりであります。同時に、未熟な事務局を支えてくださった玉懸博之前会長、平石直昭現会長、評議員・総務委員の方々、監事・幹事の方々にこの場を借りて謝意を表したいと思います。最後に、早稲田大学土田健次郎研究室を中心とする新事務局の方々のご活躍、及び日本思想史学会のますますの発展を祈念して筆を擱きたいと思います。
このたび、事務局をお引き受けすることになりました。
桂島宣弘先生をはじめとする立命館大学のスタッフの充実した学会事務をどこまで継続できるか心もとなくもありますが、微力を尽くしたいと思います。
今回事務局がおかれる早稲田大学東洋哲学研究室は、遡れば津田左右吉博士が実質的な創始者となります。また本学会が誕生した東北大学日本思想史学研究室の生みの親とも言える村岡典嗣博士も早稲田大学の出身でした。早稲田大学が事務をお引き受けするのも深い縁によるものかもしれません。
本学会の会員構成の特色は、研究対象が同じ日本思想史でありながら、拠って立つ学問的基盤が多彩であることです。各学問分野にはそれぞれの慣行のようなものがありますので、事務局に対していろいろなご注文も出てくるかもしれませんが、できる範囲内でお応えしたいと思います。
全国の日本思想史研究者数は、おそらく本学会の会員数の倍以上ではないでしょうか。つまり本学会はさらに拡大していく可能性を持っているということです。本会が名実ともに斯界を代表する全国学会として展開していくお手伝いができれば幸いです。
『日本思想史学』第38号掲載論文の投稿を、下記の要領にて受け付けます。多くの投稿をお待ちしています。
2006年度大会は10月21・22日(土・日)に、岩手大学(盛岡市)を会場として開催されます。
大会シンポジウムの内容、パネルディスカッション・個別発表の受付等については、ニューズレター夏季号(7月発行予定)でお知らせするとともに、会員の皆さまには郵便にて直接ご案内申し上げます。
本学会事務局は2005年度をもって早稲田大学文学部土田健次郎研究室に移りました。
事務局は次のメンバーで構成いたします。
本年作成の名簿には、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、所属、専門を載せる予定です。つきましては変更があったり、この中で掲載を希望されない項目がある場合は事務局まで御連絡願います。
なお今後事務局からの連絡にはメールを活用したいと考えておりますので、前回の名簿にアドレスが載っていない会員諸氏は事務局までお教えいただければ幸いです。もしアドレスを名簿に登載するのを希望されない場合には、その旨もあわせてご指示願います。
新入会員一覧ほか、一部ホームページ上の「ニューズレター」には掲載していない情報があります。