このたび愛知学院大学で開催された日本思想史学会2014年度大会をもって、本学会の会長職を降りました。2期4年の在任中に、日本思想史学会を支えてくださった役員・会員の皆様に深く御礼申し上げます。とりわけ、その大半の時期に事務局をご担当いただいた同志社大学の沖田行司先生と、幹事をお務めいただいた鈴木敦史先生には甚深の謝意を表させていただきたく存じます。
私は4年前、このニューズレターにおける就任のご挨拶のなかで、日本思想史学を含めたいまの日本の人文学界の直面する課題として、問題関心の拡散と研究の個別分散化が進むなかで、いかにして私たちの学問のスケールアップを図るかという問題があることを述べました。
研究の個別分散化の弊害は、分野を問わず近年しばしば指摘されることですが、それは日本思想史学の世界でも例外ではありません。その克服のためには、できるだけ学問上の常識を共有しない人々と、常に対話し討論していくことが重要です。日本思想史学会は歴史・文学・宗教など多様なディシプリンをもった研究者によって構成されており、腕試しの場として格好の機会を提供することが可能です。
学会の大会シンポジウムでは、昨年・今年とそれぞれ、「越境する日本思想史――思想と文学の垣根越え」「死者の記憶――思想史と歴史学の架橋」という脱領域型の研究を志向するテーマが掲げられ、活発な議論が繰り広げられました。前田新会長のもとで、本学会が今後ますます、異なる問題意識と方法をもった研究者が国内外から集い合う、創造的な議論の場となっていくことを強く望んでいます。
4年前に600人だった会員数は、いま700人を越えるまでになりました。会員の専門分野も多様化しています。2012年から今年にかけて、苅部直、黒住真、末木文美士、田尻祐一郎各氏ら本学会会員によって編集された、日本思想史に関わる二つの大きな講座(『日本思想史講座』全5巻、ぺりかん社/『岩波講座日本の思想』全8巻)が刊行されました。そこでは会員の皆さまのご協力をえるとともに、近隣領域の研究成果を積極的に折り込むことによって、数多くの野心的な論考を掲載することができました。その成果は日本思想史学という学問分野を超えて、広くアカデミズムの世界や読書人の間で注目されているところです。これを跳躍台として、日本思想史学会がより強力な学問的成果の発信の場となることができればとても嬉しく思います。
日本社会ではいま、地球温暖化や原発問題に加え、ヘイトスピーチやネットでの誹謗中傷など、心の劣化ともいうべき現象が深く静かに進行しています。これらの問題の深刻さは、これが近代化と文明化の深化に伴って浮上したものだということです。いまそこにある危機が近代化の深まりのなかで顕在化したものであれば、人間中心主義としての近代ヒューマニズムを相対化できる長いスパンのなかで、文化や文明のあり方を再考していくことが必要でしょう。
人類が直面している課題と危機を直視しつつ、人類が千年単位で蓄積してきた知恵を、近代化によって失われたものをも含めて発掘していくこと、それこそがいま日本思想史を含めた人文科学に求められている任務であると私は考えています。今後、人類の課題と将来を見据えたこうした議論もぜひ深めていきたいものです。
このたび、日本思想史学会の会長に就任しました。思いもかけなかったことで、こうして挨拶の文章を書きながらも、その責任の重さを痛感しています。
私は本学会のなかで育てられてきました。最初の学会発表は、修士課程1年の時、伊勢の皇学館大学での大会でした。発表後、それまで著書や論文を通して接してきた先生からの質問を受け、緊張したことを今でも覚えています。毎年の大会を重ねるごとに、同世代の研究者たちとの交流も深まり、研究領域を広げることができました。とくに、1984年、八王子のセミナーハウスで開かれた徂徠シンポジウムでは、江戸思想史を研究している様々の分野の研究者と合宿し、徂徠を論じあった記憶は、今でも鮮明です。その時のシンポジウムは私自身の研究のみならず、江戸思想史研究にとっても大きなエポックだったと考えています。
ここ数年、ぺりかん社の『日本思想史講座』(全5巻)と岩波書店の『講座日本の思想』(全8巻)という大きなシリーズが相次いで刊行されました。時代史と問題史の両面から日本思想史の諸問題を明らかにし、現在の日本思想史学の水準を国内外に示したといえます。二つのシリーズに通底している問題意識は、これまでの個別研究の蓄積を踏まえた全体史への志向です。これからはますます、個々人で、あるいは共同して日本思想史の全体像を提示し、その成果を広く国内外に発信していくことが求められています。
日本思想史学会は1968年11月に発足しました。その後、90年代、創設当初の親睦会的な性格から脱皮して、合理化・組織化がはかられました。学会事務局の仕事が整理されるとともに、組織運営においては、総務委員と編集委員の職掌が分離され、90年代後半には、新たに大会委員も設置されて、大会開催校とシンポジウム企画の役割分担を明確化しました。その結果、学会誌は毎号ごとに充実し、魅力ある大会シンポジウムの企画がなされています。会員数もすでに700人を超え、国際化とともに、海外の会員も増加しました。
現在、国内外のさまざまの場所で、日本思想史に関する国際会議や研究会が開かれています。ただ憾むらくは、それらの間の横のつながりが薄いような気がします。折角、学会には、多くの分野の研究者がいるのですから、もっと横断的な研究交流があってもよいしょう。もともと、本学会は哲学、歴史学、政治学、教育学、文学といった様々な領域の研究者が集まって設立されました。ここに、本学会の大きなメリットがあります。分析視角や価値意識が異なる者が、同じ場で議論できることが本学会の強みです。しかし、創立当初の親睦会的な性格を薄めたことで、学問的な活気も減退してしまったような気がします。それと関連して、大会での個別発表の形骸化も指摘されています。今後、より魅力ある大会のなかで、あるいは、かつての徂徠シンポジウムのような大会以外の場での「会員相互の研鑽」(「日本思想史学会会則」)を進める必要があるのではないでしょうか。
現在、本学会は、世代交代の転換期を迎えています。近年、若い世代の研究者が台頭して、刺激的な提言もなされています。これまでの本学会の強みを生かしながら、次の世代につなげて行くことが、私の責務だと考えています。これから2年間、会員皆様のご協力とご支援をお願い致します。
日本思想史学会の設立いらい永らく東北大学におかれていた事務局が三年毎に移動することになって、漸くこの制度も定着してきました。しかし、大会開催校の負担を軽減するために、多くの仕事が事務局に集中することになりました。会員名簿の整理、新入会員の受付と会費徴収、ニューズレターの発行、大会開催に関する雑務と、一年を通してほぼ毎月処理しなければならない仕事や事務局を引き受けた者でしか分からない苦労も多くありました。事務局が新たに東北大学に移り、日本思想史学会に関する書類や学会誌などの荷物の発送を終えたいま、研究室も片付き、正直に申し上げて、安堵の一言です。
同志社大学においては近年、日本思想史に関連するテーマを選んで研究をする院生が激減していることもあって、事務局の運営は特定の人に頼らざるを得ない状況にありました。びわこ学院大学の鈴木さん、法学部助手の望月さん、嘱託講師の和田さんと院生の斎藤さんや瓜谷さんが毎週木曜日に集まり、これらの仕事の分担を決めて処理してくれました。本来なら文尾に付け加えるべき事ではありますが、最初に感謝の辞を記しておくことをお許し願いたいと存じます。彼らがいなければ、早くに事務局を返上していたところであります。
事務局をお引き受けした当初は、不慣れなこともあって多くのミスが出てしまい、会員の皆様にはご迷惑をおかけし、お叱りをうけました。これらの責任はすべて事務局長の私が負うべきものであります。また時には理解しがたい電話やメールを頂戴する事もありましたが、事務局長の責任として処理させていただきました。事務局で処理できない問題に関しては、佐藤弘夫会長に相談し、適切なアドバイスと即座の決断をいただいて乗り越えてきました。佐藤会長にも感謝を申し上げなければなりません。
これからは私事に及んで恐縮ですが、日本思想史学会に入会して40年余りになります。当時の大会は東北大学とその他の地域が一年交代で開催されていました。秋の仙台は本当に楽しみでもありました。日頃ご指導を頂いている先生方と旅をして、講義では聞けない昔話などを拝聴する事も楽しみの一つでした。大会終了の翌日には見学ツアーが計画されていて、これも楽しい思い出を作ってくれました。学会の規模も小さかったこともあり、お互いが顔見知りで、一年一度の再会は旧交を温め、お互いの研究から刺激を受け、励みとする絶好の機会でもありました。近年は研究業績をあげるための学会活動が主となり、「学を以て交わる」という親睦の要素が少なくなったように感じるのは私の歳のせいでありましょうか。新しく就任された前田勉会長のご挨拶にもありましたように、そのような機能を持った学会として発展する工夫が必要ではないかとも考えます。
最後に学会員の皆様にお願いがあります。学会の事務局や大会開催校は個々の学会員の協力なくしては運営できません。会員の皆様におかれましては、東北大学の事務局の方々に温かいご協力とご支援をいただきますようにお願いをして事務局長の交代の挨拶に代えたいと思います。有り難うございました。
このたび事務局長の大任を引き受けることになりました。およそ事務と名のつくものが苦手で、アレルギー反応すらあり、くわえて近年、自分でも怖くなるほど、物忘れが度を超しています。
先日もある会場にカバンを置き忘れたことに気づき、あわてて電話して、やっと見つかったものの、今度は財布の入った上着をそこに忘れてしまいました。それでも、この時はどちらも心当たりがあったため、事なきを得たのですが、怖いのは、あたかも神隠しにあったかのように、物が消失するケースの多発です(今年はそれで手帳や鍵をなくし、難儀しています)。
また、金銭の管理も苦手で、この年になっても一円の貯金もなく、お金が入ると、あとさき考えずに使い、たいてい月の半分も過ぎないうちに、財布に羽が生えます。先日は、出張の際、交通費以外、ポケットに15円しかなく、さすがにこんな経験は久しぶりでしたが(学生時代を懐かしく思い出しました)、こうした人間が、事務局の長に居座ると、どんな失敗をしでかすのか、われながら戦慄します。
しかし、世の中よくできたもの、しっかりものの幹事(冨樫進さん・小泉礼子さん)が守ってくれているので、お二人に助けてもらいながら、なんとか大過なく務め切れればと願うばかりです。
ところで、いざ事務局の仕事が始まってみると、学会の発展にともなう幹事の負担が、予想以上に大きいことを実感します。また実際に幹事を担っていただく層の方々をとりまく研究環境も、ますます厳しくなっています。今後、少しでも幹事一人当たりの負担を軽減できるよう、幹事の人数を増やすことを検討してもよいのではないでしょうか。
事務局長最初の仕事として、郵便局に行ってきました。皆さんもご承知のとおり、団体名義の口座開設は、近年とみにチェックが厳しくなっています。わたしの場合、結局、二日間、計5時間を要しました(その間、その場を離れることもできないのです)。最後に、暴力団関係の団体ではないことを誓わされ――わたしの名前のせいではなく、誰にも確認するとのこと。郵便局の方も、さすがに申し訳なさそうでした――、事務的仕事の負担増加の要因には、こうした社会環境の変化もあるようです。
ですので、このような不条理に巻き込まれる度合いをできるだけ減らせるよう、事務局の仕事の簡素化が、事務局長第一の使命と思っております。その点、よろしくご諒解ください。
とはいえ、学会にも当然、社会的責任はあり、そちらの面にも、もちろん意を払っていくつもりです。この点で、少し気になっているのは、会誌のレポジトリ化のための著作権をめぐる手続きです。公開承認か否かを問う手段としては、やはり郵送による意思確認の方が安全ではないかとの懸念です。
幸いなことに、国立情報学研究所(CINII)によるサービスが今年度で停止することに伴う時間的余裕が若干ありそうなので、様子を見ながら、場合によっては、改めて皆様にご提案させていただくことになるかもしれません。
そもそも、事務局の仕事というのは、会員の皆様の学会・研究活動が活発に行えるよう、下支えすることだと思っております。わたし個人としては、海外会員・学生会員・定年退職されたシニア会員などの学会・研究活動にたいする、なんらかのサポートができないかとの思いがあります(今のところよい案は浮かんでいませんが)。
金銭面のご相談には応じられませんが、学会・研究活動に資することで、事務局がお手伝いすべきご提案等ございましたら、ご遠慮なく、わたくし宛にお声がけください。わたしの一存で決められることはほぼ皆無ですが、少なくとも、お話をうかがうだけはできます。
はじめに述べたように、本来わたしがつとめるべきではない役目ですが、失敗を気にせず、開き直れるのが、唯一の取り柄(?)です。どうぞ、皆様、暖かい目で見守ってくだされば幸いです。
名古屋駅に降り立つと、もう二十年前になるであろうか、学部時代の今は亡き親友に名古屋市内のあちこちを案内してもらったことを思い出す。
私は現在、全学教育科目で大学史を主に担当している。だから日本思想史の研究の動向を知る上でも、この大会は貴重なものである。
今年度の大会で特に感心したのは会場校の愛知学院大学を中心とした皆様のきめ細やかな心配りである。前年、仙台で行われた大会の手伝いをした者の一人として素晴らしいと感じた。発表会場の配置から誘導、交通機関への手配に至るまで、諸先生方は多忙の中、時間を割いて準備に念を入れて当たられたであろうと推察する。一参加者としてここに改めてお礼申し上げたい。
研究発表については発表者も若手からベテランまで多様であったし、二日目の午後に行われた公開シンポジウムは十分に聞き応えのあるものであった。佐藤弘夫先生、羽賀祥二先生のお二人によるご発表は、メインテーマの「死者の記憶」そして「思想史と歴史学の架橋」というサブタイトルに見事に合致するものであった。活字だけでは感じることのできない、その場で聴くというライヴの威力を実感した。
私が勤務校で担当している大学史の授業でも歴史的事象をいかに対象化して捉えるかということには緊張がついて回る。おそらく黒板を前にして歴史を勉強することは最後となるであろう理科系の学生、特に圧倒的に数が多い工学部生の凄まじいほどのやる気に応えるべく言葉を慎重に選びつつ語るのであるが、現代史の難しさと面白さとはそうした点にもあるのかもしれない。また1年生向けの科目である基礎ゼミに関する全学教育FDで、若手の述べようとすることを粘り強く聴く姿勢が必要なのではないかと先日話す機会があった。これは日本思想史学会にも当てはまると思う。ベテランと若手の対話の可能性については――現実的には懇親会の場を活用して――探ってみる必要があるようにも感じている。
第8回日本思想史学会奨励賞は、例年通り、ニューズレターおよびホームページを通じて公募を行い、応募は単行本著作4点であった。それに学会誌『日本思想史学』第45号掲載論文で資格規定を満たした論文のなかから、同誌編集委員長の推薦になる論文2点を加え、合計6点を対象に選考を行った。
選考委員による査読結果にもとづいて第一段審査を行い、その結果にもとづいて、委員全員で慎重に審査を行った結果、全会一致で、上記著作への授賞が決定した。
本作品は、仏教説話集の一つとされる『日本霊異記』が真に内包したであろう問題意識を、テキストの「内在的な読み」に徹して解明しようとした意欲作である。仏教説話集たる『日本霊異記』に、仏教とは関わらない説話が含まれていることに注意を促し、そこに編著者景戒のどのような問題意識が隠れていたのか、と問いなおす魅力的な導入に始まり、本書は一貫して、明快なことばと平易な表現により、『日本霊異記』編集の企図を明らかにしようとしている。
「「日本国」という末法辺土」において「仏法という普遍的な理法やあり方が、天皇というこの国特殊な存在を通して」いかにして顕現してくるかを、景戒が『日本霊異記』を通じて語り出したのだとする著者は、倫理思想史のアプローチをもって、その具体相を解読している。
徹底した「テキスト内在的」な「読み」からもたらされる豊穣な収穫とともに、逆にその手法ゆえの問題点もたしかに指摘されるが、「凡人(ただびと)」「慚愧」といったテキスト中のキーワードを介してなされる本書の綿密な議論は、明晰な文章力とあいまって、読者を新たな視野に導くものである。本学会の奨励賞受賞作にふさわしい研究成果と判断される。(中村春作)
本作品は、従来の摂関院政期思想史研究を主導してきた「民衆仏教論」が、近代固有の時代状況を背景とした歴史的産物であるとの問題意識にもとづき、末代観と末法思想の混同への着眼と検証を軸に、当該時代の貴族と仏僧らの思想・心性を根本的に見直そうと試みたものである。
これまでの民衆仏教論を規定してきた視座が、明治期における平民主義の擡頭、新仏教運動の展開などの動きのなかで生み出されてきた歴史的産物にすぎないこと、摂関院政期の歴史思想の基調を「末法思想」と捉えてきた従来の研究に対し、それとは異質な「末代観」こそがその根本であること、法然の思想を従来いわれるような意味での「民衆仏教」と位置づけることは不可能であることなど、衝撃的な問題提起が次々と繰り出される。
本作品は、従来の摂関院政期思想史研究に対し、独創的かつ根源的な疑義を呈するとともに、当該期の思想とエートスを、史料を博捜しつつ通説にとらわれない目で粘り強く読み直すことで、独自の思想地図を描き出しており、本学会の奨励賞受賞作にふさわしい意欲作であると判断される。(佐藤弘夫)
すばらしい賞をいただきましたこと、まことにありがたく思っております。 大会の際には多くのみなさまからお祝いのお声をかけていただきました。自分の研究が認められたこともさることながら、たくさんの方とこうしてあらためてお話しさせていただける機会が与えられたことこそ、まさに受賞のご褒美だな、と、どこか上気しながら嬉しい一日をすごしました。
景戒が『日本霊異記』を著してからすでに千二百年が経っていますが、世界は相変わらず、科学や合理では説明のつかない、「霊(あや)し」く「異(くす)し」く「奇異(めづら)し」いものごとで満ちています。それらはいったい何を示しているのか、そうしたものごとに囲まれた〈このわたし〉とはどのような存在なのか――。景戒が千二百年前に問うた問題は、そのまま、現代を生きる私たちの問題でもあると思います。
そんな問いを念頭に、できるだけテキスト内在的に、と考えて書いた今回の本ですが、むろんそれだけで十分だとは思っておりません。講評や大会の場でご指摘・ご教示いただいたことを導きとし、奨励賞という大きな〈励まし〉を力としながら、今後『霊異記』をはじめとするさまざまなテキストに取り組んでまいりたいと思っています。
出版後、この本を高円宮久子妃殿下に直接献上するというご縁に恵まれました。(そのときには、『仏と天皇と「日本国」』という書名はもう少しあたりさわりのないものにしておくべきであったと、少し反省したりもしましたが、それはともあれ、)こうしたご縁も、また、ぺりかん社の藤田啓介さんのご尽力でこうした本にしていただいたことも(装丁もみごとな完成品を手にしたときの気持ちは、嬉しさよりも、驚きに近いものでした)、さらには今回こうして奨励賞をいただきましたことも、ささやかではありますが、しかし私にとっては、大事な「霊(あや)し」く「異(くす)し」く「奇異(めづら)し」いことであったとあらためて感じています。
この度、第八回日本思想史学会奨励賞が拙著『摂関院政期思想史研究』(思文閣出版)に授与され、大変恐縮しております。
拙著の「後記」にも書きましたように、当時の私は論文と単著を使い分けるつもりでおりました。雑誌論文で学界に問題提起し、加筆訂正したものを単著として刊行する、というようにです。無論、そうして刊行した拙著もまた円満無欠でないことは自覚していましたが、拙著によって学界に問題提起しようとはあまり考えておりませんでした。
ところが刊行後、拙著には思想史学の内外から批判が寄せられました。複数の研究者が私のような浅学の単著を顧みて、その当否を検証してくださったことは嬉しい驚きでした。しかもその過程では、ある研究者が拙論に着想を得て新説を唱え、私もまた批判を好機として考察を深められた、という展開までありました。意に満たない出来ではありますが、それでも刊行したことで聊かなりとも自他に益する所があったようです。
今回の受賞でも、拙著はやはりそういった問題提起としての意義が評価されたように拝察します。これらのことから改めて思いますのは、自分一人だけでなく学界全体にとっても、学問という大器に完成はないということです。そして永遠に完成しないからこそ、永遠に切磋琢磨していかなくてはなりません。考えて書いて出して、その成果を検証に供し、また考えて書いて出して、ということを何度となく繰り返してこそ、研究者も学界も学問完成へと歩みを進められるのではないでしょうか。
拙著に寄せられた批判の一部にはすでに応答しており、残りの一部にも今後応答していくつもりでおります。私はこれまでのところ、論旨の変更を迫られるような大きな誤謬はまだ見付かっていない、と考えております。ですが今後とも、拙論に不審などありましたら、たとえ小さなものであっても是非忌憚なくご指摘くださいますよう、広くお願いいたします。
こちらをご覧ください。
こちらをご覧ください。
『日本思想史学』第47号掲載論文の投稿を、下記の要領にて受け付けます。制限枚数等の規程に一部変更があるので、ご注意下さい。
「投稿規程」に沿わない原稿は、査読の対象外とすることがありますので、規程を熟読のうえご投稿ください。
多くの投稿をお待ちしています。
こちらをご覧ください。
2015年度大会は2015年10月17日(土)・18日(日)に早稲田大学(東京都、戸山キャンパスの予定)を会場として開催されます。
大会シンポジウムは初日、10月17日(土)の午後にて、またパネルを含め、個別発表は、18日(日)を予定しております。
大会シンポジウムの内容、パネルディスカッション・個別発表の受付等については、ニューズレター夏季号(7月発行予定)でお知らせするとともに、会員の皆さまには郵便にて直接ご案内申し上げます。
10月25日に開催された2014年度総会において、下記の事項が承認または決定されましたので、お知らせいたします。
(予算) | ||
会費 | 3,193,000 | 3,199,500 |
刊行物売上金 | 69,432 | 80,000 |
前年度繰越金 | 3,531,955 | 3,531,955 |
その他 | 1,315 | 0 |
計 | 6,795,702 | 6,811,455 |
(予算) | ||
大会開催費 | 500,000 | 500,000 |
学会誌発行費 | 1,170,612 | 1,200,000 |
通信連絡費 | 412,114 | 400,000 |
事務費 | 32,977 | 300,000 |
事務局費 | 388,280 | 400,000 |
HP管理費 | 69,430 | 150,000 |
委員会経費 | 129,217 | 350,000 |
予備費 | - | 3,511,455 |
次年度繰越金 | 4,093,072 | - |
計 | 6,795,702 | 6,811,455 |
会費収入 | 3,265,200 |
刊行物売上金 | 80,000 |
前年度繰越金 | 4,093,072 |
その他 | 0 |
計 | 7,438,272 |
大会開催費 | 500,000 |
学会誌発行費 | 1,200,000 |
通信連絡費 | 400,000 |
事務費 | 300,000 |
事務局費 | 400,000 |
HP管理費 | 150,000 |
委員会経費 | 350,000 |
予備費 | 4,138,272 |
計 | 7,438,272 |
当会ホームページの「会員研究業績紹介」欄に載せる会員諸氏の研究業績を、学会事務局までE-mail、或いは葉書でお知らせください。その際、著者名(ふりがな)、論文・著書名、掲載誌(号数)、発行所、刊行年月をご明記願います。
会員である下記の方が逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。
会費納入状況は依然として芳しいとは言えません。学会の安定した持続のためにも、会費納入をよろしくお願いします。
会費を納入する際には、下記の口座番号にてお振り込み下さい。(大会事務局は別口座になります・ご注意ください)。
※注意:事務局移転に伴い、口座番号が変更となりました。旧口座はすでに閉鎖されており、2013年度以前に前事務局より発行されました振込用紙を用いての会費納入はできません。十分ご注意下さい
(ゆうびん振込専用口座)3年をこえて会費を滞納された方は会則第四条に基づき、総務委員会の議をへて退会扱いとさせていただくことがあります。
また、過去2年分の会費を滞納された方には、学会誌『日本思想史学』の最新号第46号(2013年度分)をお送りしておりません。会費納入の確認後に送らせていただきます。なお請求年度以降の会費をまとめて納入していただいても結構です。